danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

火車 (新潮文庫)

喬子の生き様は強烈です。事は父親の借金苦に端を発し、恐怖の取り立てに遭い、夜逃げによる一家離散。その後、両親は誘拐され、その心労が祟って母親は早くに亡くなり、さらに父親は廃人同様となります。

それでも取り立ては終わらず、喬子にこの状況を逃れる手立てはありません。そんな喬子だからこそ、誰よりも平穏を得たかっただろうし、誰よりも幸せを得たかったであろうと思います。

これまで誰にも吐露できなかった話、ひとり背負ってきた話、逃げ惑わってきた月日、隠れ暮らしてきた月日、想像を絶する苦悩を私も心して聞きたいと思いました。

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

 

読了日:2017年7月7日 著者:宮部みゆき 

 

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魔術はささやく (新潮文庫)

本物語では様々な人物の苦しみが表現されています。公金を横領した父親の蒸発により心に深い傷を負った守。守の父親をひき殺しながら生涯隠ぺいし続ける決意をした吉武浩一。

とりわけ、この二人の苦悩は計り知れません。菅野洋子の交通事故死というプロセスを経て真実を知ってしまった守。老人の計らいにより、裁きの権限が守に与えられます。

しかし、守は吉武を捌くまでは至りませんでした。顕在意識では許せずとも、潜在意識の中においては、自身と母親が愛されていたことに気付き、その結果、吉武を理解し、哀れむことができたのだと思います。

魔術はささやく (新潮文庫)

魔術はささやく (新潮文庫)

 

読了日:2017年6月20日 著者:宮部みゆき

 

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スナーク狩り (光文社文庫プレミアム)

妻子を殺められた織口が殺害者の真の姿を暴き、裁きを下さんと銃口を向けたとき「撃て」「殺れ」と強く念じている私がいました。

状況説明も兼ねた範子の心理描写が迫りくるような臨場感に溢れており、そのため、こうした心境になったわけです。また、今まさに銃を打ち放とうとしたその刹那、「おじさん!」と少年の声が掛かったシーンには心底驚かされました。

前段で声を発せない少年、織口に助けられた少年、確かに登場していました。この少年が本物語の最大の見せ場で再登場し、声を発するとは想定外であり、宮部さんの展開力に感服した次第です。 

スナーク狩り (光文社文庫プレミアム)

スナーク狩り (光文社文庫プレミアム)

 

読了日:2017年6月9日 著者:宮部みゆき

 

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幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

アドラーを理解するための根幹は「愛」であり、アドラーの語る愛ほど厳しく勇気を試される課題はありません。
本当の愛を知ったとき、「わたし」だった人生の主語は「わたしたち」に変わると言います。愛とはふたりで成し遂げる課題であり、自己中心性から脱却したときに「わたし」からの自立を果たせます。
「愛とは決断である。」確かに現在の私の家庭があるのは、愛する決意と決断と約束との賜物であり、そのことを実感することができます。「愛する勇気」を他人に向けてみた時、それは幸せになるきっかけになりえるのかも知れません。 
幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

 

読了日:2017年5月30日 著者:岸見 一郎,古賀 史健

 

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プラチナデータ (幻冬舎文庫)

本書で興味を惹かれたのは、事件の真相に至る経緯等ではなく、DNAプロファイリングであり、現実社会でどこまで利用可能になっているのかといった部分です。
プロファイリング結果により、身体的特徴が明確に分かるものなのか。容貌に関して再現できるというが如何ほどのものなのか。
確かに人間の身体的特徴はDNAによって決まるのでしょうが、それを割り出すには膨大なDNAのデータベースが必要と思われ、現段階では難しいのではないかと考えます。
とはいえ、いずれ利用可能になる日はくると考えた時には、何か得体の知れない不安を感じます。 
プラチナデータ (幻冬舎文庫)

プラチナデータ (幻冬舎文庫)

 

読了日:2017年5月15日 著者:東野圭吾 

 

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じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)

"わたしというものは、他者の他者としてはじめて確認されるものだ"ということが本著者が最も主張したいことだったのだろうか。
確かに"他者にとって意味のある他者たりえているか"を考えてみると、自分が思っている自己価値や自己評価並びに存在感に対して、他人が私の存在を知らなかったり、気にかけてさえいなかったりすると、酷く傷ついたことがあったことを思い出す。
この点において、他者のなかに位置を占めていない不安というものがあるということが実感できる。
ただし、それを踏まえて、どう考えていくべきなのかは分からない部分である。
じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)

じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)

 

読了日:2017年4月24日 著者:鷲田 清一

 

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片想い (文春文庫)

本書は性同一性障害ジェンダー半陰陽といったある種タブー視されている部分にスポットがあてられ、そこに生きる者達の苦悩を片思いという言葉で見事に表現した物語です。

性同一性障害者に限らず、人は瞬間的に気持ちが男よりになったり、女よりになったりということが往々にしてあり、この問題がまるっきりの他人事ではないということに気付かされます。

社会に目を向けてみれば、例えば、同性結婚問題などがあります。同性結婚と聞いただけで、私はある種の嫌悪感を持っていましたが、これまでとは違った視点で考えていくことができそうです。

片想い (文春文庫)

片想い (文春文庫)

 

読了日:2017年4月11日 著者:東野圭吾 

 

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日常の小さなイライラから解放される「箱」の法則―感情に振りまわされない人生を選択する

本書を読んでいる最中、突如、私は過去に箱から出て問題解決を実現していたことを自覚しました。

8年ほど前、私は前職の同僚に対し箱に入っていました。同僚は職場の全員に対し自己主張を無理強いする我儘な人間だと思っていました。しかし、あるとき同僚のことをよく考えてみたのです。

すると、主張の仕方に難はあるものの言っていることは、業務の改善策や職場空間を清潔に保つための改善策など会社全体のことを考えた全うな主張でした。

同僚の適切な面に目を向けたことで、私は同僚を人として見ることができ、関係修復を図れていたのです。

日常の小さなイライラから解放される「箱」の法則―感情に振りまわされない人生を選択する

日常の小さなイライラから解放される「箱」の法則―感情に振りまわされない人生を選択する

 

読了日:2017年3月26日 著者:アービンジャー・インスティチュート

 

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2日で人生が変わる「箱」の法則

前作で気に掛かったのは、相手が箱の中に居続ける場合の平和な心の維持の仕方です。

今作では、澄んだ平和な心を取り戻し、かつ、それを維持し続ける手法として、最もよい影響を与えてくれている人達のことなどを意識して考えることの重要性などが説かれています。

確かに平和な心を維持するために有効な考え方だと思います。得てして人は99の良いことより、1つの悪いことに心を奪われがちです。

そうならないためにも、相手の適切な行動に目を向けることで、人として見ることができ、心の平和を維持することに繋がっていくのだと考えます。

2日で人生が変わる「箱」の法則

2日で人生が変わる「箱」の法則

 

読了日:2017年3月17日 著者:アービンジャー・インスティチュート

 

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自分の小さな「箱」から脱出する方法

人は自分の感情に背いたときから自分への裏切りが始まり箱の中に入ってしまいます。すると、正当化してくれる根拠になりそうな物の価値を過大に評価し箱の中に留まります。まさしく、私も同様の問題を抱えています。

この問題は対人関係において発生します。箱の外に出るには、相手も自分と同じ希望 やニーズ、心配、恐れがあることを切に感じ取ることが重要です。

しかし、相手が箱の中にいると、この気持ちを持ち続けるのは難しいと感じます。組織に所属する人間であれば、組織改善のためなど確固たる志を持って対峙していく必要があると考えます。 

自分の小さな「箱」から脱出する方法

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読了日:2017年3月2日 著者:アービンジャーインスティチュート  

 

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鳥人計画 (角川文庫)

本書における真犯人がまさかの楡井の彼女であった点には驚きました。しかしながら、序盤の彼女の心理描写を踏まえて犯人だと特定することはできず、若干、無理があると感じました。

振り返ってみて、伏線と思しきものが幾つか提起されてはいますが分かりにくかったです。

ただし、峰岸に手紙を書いた人物は一体誰なのか、また、警察への密告者は同一人物なのか、さらに、峰岸が楡井に殺意を抱いた動機は何だったのか等を考え込ませる点は、氏ならではの臨場感が演出され、惹きつけれられる部分でした。

総じて、楽しませてくれる作品ではあります。

鳥人計画 (角川文庫)

鳥人計画 (角川文庫)

 

読了日:2017年2月17日 著者:東野圭吾  

 

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魔球 (講談社文庫)

刺殺事件における「魔球」という謎のメッセージや、謎解きの真相に斬りこんでいく刑事の描写などを見るにつけ、次第に強烈に惹き込まれていく自分がいました。

須田武志の生き様は強烈です。母親になんとしても恩を返すという信念、恩を返す手段として野球に全てを賭ける姿は執念を感じます。

私は、真の男とは如何に我慢がきくかということを常々思っているため、須田武志の生き様に共感します。

罪の是非は別として、命を賭けて守ろうとした人がいたと語られた手記は、残された者の心に刻まれた紛れのない真実だと思います。 

魔球 (講談社文庫)

魔球 (講談社文庫)

 

読了日:2017年2月4日 著者:東野圭吾  

 

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禁断の魔術―ガリレオ〈8〉

本書は4話が収録された短編集です。野球好きな私にとって、戦力外通告を受けたかつてのエースにスポットをあてた『曲球る』は興味深い作品でした。

全盛期と現在のフォームとの違いを化学的に分析し、狂いが生じていた感覚をもとに戻す手法には、なるほどと思わせるものがありました。

しかし、幾らフォームを正しても、そこに本人の情熱が戻らなければ、真の復活とはなりません。

その情熱を復活させるため、湯川が奔走し、真の復活のきっかけを与えた部分に、湯川の人間味が感じられ、化学と人情の融合の素晴らしさを感じます。  

禁断の魔術―ガリレオ〈8〉

禁断の魔術―ガリレオ〈8〉

 

読了日:2017年1月28日 著者:東野圭吾  

 

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アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉

本書は端的にまとめられ、勇気づけや実りのある人生とするためのたくさんの術が示されています。ところが、せっかく得た術なども往々にして実践できず、延々と模索し続けてしまうのが現状だと思います。

結局のところ、実践できるかできないかは、その人の決意力にあるのだと思います。これだと考えたら、絶対にそうするという強い意志をもって実践しきる力が何よりも必要です。

あとは、自分を信頼する力も必要だと感じています。自分の持っている能力を信頼することで、動じない自分が生まれ、意思決定を行っていくことができるのだと思います。 

読了日:2017年1月18日 著者:小倉広 

 

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虚像の道化師 ガリレオ 7

本書における『幻惑す』と『心聴る』は、心霊的な力が働いているかのように見せかける巧妙なトリックが仕組まれ、これまでのガリレオシリーズには無かった新たな仕掛けとなっていました。

また、『偽装う』と『演技る』は、殺人を犯していない第三者が手を加えるという想定外の手法がとられており、これまた、これまでのガリレオシリーズには無い仕掛けであり、興味深い部分でした。

本シリーズは物理学的なトリックを考えるだけでも大変な筈ですが、そこに、新たな仕掛けも加えられていくというプラスアルファもあり、より楽しませてくれます。 

虚像の道化師 ガリレオ 7

虚像の道化師 ガリレオ 7

 

読了日:2017年1月8日 著者:東野圭吾

 

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