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danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

賢者はベンチで思索する (文春文庫)

本書には、難解で複雑なミステリー要素はありません。代りに、主人公の久里子と謎めいた老人との関わりを持たせたことで、この老人の存在が妙に頭に残るようになります。 そして、物語が進むにつれ、老人の存在感が際立ってくると、いよいよこの老人が何者な…

三つの名を持つ犬 (徳間文庫)

この物語が俄然面白くなってきたのは、振込め詐欺の末端要員である江口が登場してからです。 この江口は、親が残してくれたお金を投資とも言えない博打で溶かしてしまいます。世間を舐め、自堕落な生活を過ごした結果、底辺から這い上がれない状況となります…

ダークルーム (角川文庫)

各作品によって、読み易さや惹き込まれ具合に差があるなと思っていたら、1994年~2011年までの間の作品が収録されており、最近に近づくにつれ、読み易さや巧さが感じられました。 印象的だった作品は『北緯六十度の恋』です。 冒頭の「憎しみに囚われるのは…

Shelter(シェルター) (祥伝社文庫)

本書においては「心の痛み」を感じずにはいられない作品でした。 なぜ、私自身が痛みを感じるのか。歩と恵との関係における痛みは、傷つけてしまった一言や行動に対する後悔や胸に残る遣る瀬無さです。 私自身、家族や兄弟との間で、後悔している一言や後悔…

茨姫はたたかう

本書でも力先生の問いかけが心に響きました。 「臆病なこと自体は悪いことではない。そのお蔭で今までそれほど傷つかずにすんだだろう」と。臆病から良いものが生まれることはありません。己を守り、己自身をより良い方向へ導いていくのは勇気でしかありませ…

ノマドワーカーという生き方

サラリーマンであれば、ほとんどの人がノマドワーカーという生き方に一度は憧れると思います。 しかし、憧れはするもののその生き方を実践できる人はほんの僅かだと思います。 では、立花さんはなぜその生き方を実現するこができたのか。 それは「ノマドワー…

カナリヤは眠れない (ノン・ポシェット)

この物語で興味深かったキャラクターは整体師である力先生です。 その力先生が言った「物事は一面だけではない。わたしたちは多面角を転がしながら生きている。その中のどの面を選ぶのかは、その人の自由だ」という言葉は印象的でした。 兎角、人は一面によ…

さいごの毛布 (単行本)

本書は犬の習性を通じて新たな視点が投げかけられる非常に興味深い作品でした。 『犬は昨日を愛する生き物であり、捨てられても飼い主を忘れない』つくづく考えてみると、まさにその通りだと思います。 麻耶子の息子である辰司は、形の上では母親に見捨てら…

はぶらし

これほどまでに、じれったくて、歯がゆくて、なんとも言えず、早く読み進めてすっきりしたいと思ってしまう作品は初めてでした。 居候状態となった水絵には過去に盗みの常習などがあったことから、水絵には居候以外の目的もあるのか、そして、鈴音の好意に付…

砂漠の悪魔

榊原の自殺によって広太の人生は急変し、ヤクザに脅され抗うことさえできずに破滅の道へと進んでいきます。 ところが、異国の地で同じ日本人の雅之と出会い、人の命の軽さを知り、自分の権利は自分で守っていく姿などを目の当たりにすることで、慄いてばかり…

キアズマ

近藤史恵さんはつくづく不思議な作家さんです。 女性でありながら、男性でなければ決して分からないような気持ちや心境まで実によく表現されています。 レースにかける意気込みや思いだったり、レース中での鬼気迫る心境や勝負どころの心理描写などに見るべ…

サヴァイヴ

本書はスピンオフ作品ですが中々よかったです。 『スピードの果て』で、伊庭がレースの中で心の苦しみを克服し、最後、白石に見せた笑顔のシーンは心温まる思いでした。 石尾について、『サクリファイス』では心情等が吐露される事なく亡くなりましたが、本…

エデン

近藤史恵さんはつくづく読ませ上手な作家さんだと思います。 ロードレースに臨む前の心情描写や勝負所の描写を端的で明確に表現し結果を次々に開示していく様は読みやすく記憶に残ります。 本作の主たるポイントは薬物疑惑にあったと考えます。 未来のエース…

サクリファイス (新潮文庫)

本書は自転車ロードレースという日本ではあまり馴染がない競技を取り入れていますが、文章に無駄な描写がないためよく分かります。 また、石尾の死後、白石が死の真相を辿っていく経緯は実に読み応えがあります。 真相に辿りついたと思いきや、新たな疑問が…

残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)

「俺ァ男だ、俺ァ男だ」この一文を読んでから10年以上たちますが、今日この日まで、この一文を胸に刻んで生きてきたといっても過言ではありません。 それほどにこの言葉のインパクトは強烈なものでした。苦しい時、悲しい時、心が折れそうな時、打ち負けそ…

闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)

10年以上ぶりの再読です。 この一年半、池井戸潤、高野和明、横山秀夫、今野敏、宮部みゆきの作品を読んできましたが、ここに至って、無性に本書を再読したくなりました。 それは何故か。本書には、前述の作家さん達でも描き切ることができなかった『真の…

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

『法廷』に関しては、単行本の方にレビュー済みですので、ここでは、最後に収録されている「負の方程式」についてコメントしたいと思います。 『ペテロの葬列』において、杉村三郎が離婚という憂き目にあい、その時のレビューに腹を括った男の生き様が見てみ…

ソロモンの偽証 第III部 法廷

本『法廷』では、『事件』、『決意』には無かった醍醐味を味わうことができました。 それを味わえたのは、弁護人が被告人の無罪を弁護しているさなかにも関わらず、被告人が犯してきた数々の悪事を暴き、被告人に突きつけ、被告人を恨む人間なら誰でも告発状…

ソロモンの偽証 第II部 決意

「真実を知りたい」という藤野涼子の強い決意により、遂に、学校内裁判のお膳立てが整いました。 第Ⅲ部の『法廷』では、様々な修羅場が巻き起こることが想定されます。 柏木卓也の死の真相とは?5本の電話の意図とは?そして、弁護人の神原和彦の真の目的は…

ソロモンの偽証 第I部 事件

宮部さんの作品は杉村三郎シリーズの3部作に続き、4作品目となります。 どの作品も導入から事件発生の過程までおどろおどろしく、見事に惹きこまれます。 杉村三郎シリーズでは、いずれも女性の心の悪(毒)の部分が強調される形でクライマックスが迎えら…

ペテロの葬列

本作品は『誰か』、『名もなき毒』に続くシリーズ3作目になりますが、事件に関する謎や推理の部分において、最も楽しませてくれた作品でした。 ただ、読んでいて面白いのですが、事件の謎が終息していく様はそれほどインパクトが無く、想定の域を超える程で…

名もなき毒

本作品の真のクライマックスが毒殺犯の特定ではなく、原田いずみの立て籠もり事件から派生する毒殺犯である青年の説得、心情吐露、被害者の孫である古屋美知香との対峙にあった点は、クライマックスとして大いに盛り上がり、惹き込まれた部分でありました。 …

誰か―Somebody

宮部さんの作品を初めて読みました。 冒頭の聡美の相談話の内容から、梶田氏の死の真相には、ただならなぬ様相が呈していると感じられ、大いに惹きつけられました。 しかしながら、梶田氏の死の真相が明らかになっていく様は推測の範囲内であり、冒頭に抱い…

自覚: 隠蔽捜査5.5

本作は『初陣』に続くスピンオフ短編集ですが、私はこの設定が結構好きです。 スピンオフ以外の作品は全て竜崎視点の描写であるため、竜崎を取巻く面々に対する関心や感情移入することがどうしてもできませんでした。 しかし、先の『初陣』と今回の『自覚』…

宰領: 隠蔽捜査5

本作における誘拐事件には臨場感とスリリングさがあり、本シリーズの中で最も引込まれました。 一体犯人はどうやって議員を誘拐したのか?本事件は複数犯による犯行なのか?そして、誘拐犯の真の目的は何なのか?等の考えさせる要素がたくさん盛り込まれてい…

転迷―隠蔽捜査〈4〉

本作では、これまでのシリーズのように竜崎が窮地に立たされる程のシーンは無く、そういった意味では緊迫感はあまり感じられませんでした。 しかし、今回は同時発生した複数の事件によって発生した様々なトラブル(人員調整や厚生労働省からのクレーム、伊丹…

初陣―隠蔽捜査〈3.5〉

本作品の主人公は竜崎の同期である伊丹でしたが、なかなかに面白い作品でした。 伊丹には竜崎のような原理原則を貫ける図太い感性は持ち合わせていません。 弱さとコンプレックスの狭間で自分なりの処世術を身に付け、キャリアとして懸命に生き抜こうとする…

疑心: 隠蔽捜査3

本作では、まさかの恋心から竜崎の判断が鈍り、あわや大失態を犯すのではと随分と冷や冷やさせられました。 なお、この恋心に捉われる様が後半まで続いたのは少々引っ張りすぎではと感じました。そのため、"婆子焼庵"のくだりからテロリストの逮捕まで、一気…

果断―隠蔽捜査〈2〉

一作目ですっかり竜崎のファンになってしまった私ですが、左遷させられた竜崎が本作においても自分らしさを貫き通せるのか、気になっていました。 事件発生に伴い、格上連中から掛けられるプレッシャーや、妻が緊急入院した事態から、弱気になり掛けた場面も…

隠蔽捜査

今野敏さんの作品を初めて読みました。この作品はシリーズものになっているみたいですね。 本書では主人公の竜崎の人となりが丁寧に描写され、そして、幼馴染である伊丹との関わりを中心とした構成となっており、事件に関わるスリリングさや犯人の心理に迫っ…

第三の時効

本書が横山作品のラスト作品となりましたが、ラストを飾るに相応しい、非常にレベルの高い作品だったと感じました。 6つの短編ともに読み手の先入観などを利用し、衝撃の結末に結び付けられる様は圧巻であり、見事の一言です。 また、強行犯捜査の3人の班…

震度0

冒頭で椎野が真っ赤なスカートをはいた少女の夢と阪神大震災とが引き合いに出され、どんな展開が待ち受けているのかと否が応にも期待が高まりました。 しかし、震災と事件との関係性は薄く、若干、拍子抜けした感は否めませんでした。 ただし、不破の疾走に…

看守眼

本書では表題の『看守眼』が心に残りました。 29年の歳月を留置管理係として過ごしてきた近藤の内に秘めた情熱、経験で培った確かな観察眼、その観察眼をもって、人を殺めた人間とそうでない人間との違いを見極めるシーンは、理屈では測れない説得力と迫力を…

ルパンの消息

本書は『64』を読了後すぐに読み始めた為、当初は爽快感だけを感じていましたが、心を闇に閉ざした人々の気持ちが開示されていく様を読むにつれ、心理の奥底までもが表現された凄い作品だと感じました。 本書のクライマックスは内海の逮捕ではなく、幸子の心…

64(ロクヨン)

本書で気になった点は幾つかあります。 近くの親類宅までの間に少女がどのように誘拐されたのか?誘拐犯との接点や関連性が希薄すぎないか?誘拐犯が半分食べてしまった手紙には本当のところ何が書かれていたのか? それにも拘わらず、濃密な充足感を感じま…

顔 FACE

本書では、『心の銃口』が最もインパクトのある作品でした。 冒頭に警察マニアの心情描写が描かれ、ここで、その人物のことが頭にインプットされます。 その後、同僚で拳銃射撃競技の女子の部で優勝の南田安奈が襲われ、拳銃を奪われたことから、当然、犯人…

動機

本書で特に印象的だった作品は『逆転の夏』です。 完全犯罪を依頼する強請男は誰なのか?伏線として「この男を殺してください」のフレーズが一度、「あの男を殺してください!」のフレーズが二度出てきていましたが、強請男が殺された女子高生の父親だったと…

陰の季節

改めて横山さんの作品の凄さに感嘆しました。 それを特に感じさせたのが最終話の『鞄』です。 本作品の結末は、県警職員たった二人の個人的な問題の話でしかありません。いかにもスケールの小さな話です。それでも十分に楽しめ、満足してしまうのだから不思…

臨場

これまで私が読んだ横山さんの作品の中では、珍しく読後感が心地よく感じられた一冊でした。 組織に媚びず、気骨と男気溢れる倉石の存在がそのように感じさせたのかも知れません。 本作品で特によかった章は『贐』です。小松崎親子の過去はとても暗く、悲壮…

真相

本書は短編集であることから、さくさく読んで次の作品に移ろうと気楽な気持ちで読み始めましたが、その考えは大きな誤りでした。 「真相」、「18番ホール」など半端無い程の緊迫感、臨場感があり、読むスピードはいつになく速まり、頁を捲る手は止まらず、結…

影踏み

本書は横山さんの作品にしては物語の展開や構成が粗い印象を受けました。 しかし、ノビカベのように、無口で常に研ぎ澄まされ、哀愁を帯びたキャラクター設定は個人的にかなり好みでした。 このノビカベですが、冷酷無比なだけでなく、『使徒』では盗人仲間…

深追い

本書の「締め出し」で、主人公の三田村が過去を葬り去る儀式を遂行しようとするシーンに共感しました。 不良に脅かされた苦々しい屈辱の過去を持つ三田村にとって、この儀式を遂行することは、大変意義があることだと思います。 私自身、過去に苦い出来事が…

半落ち

各章いずれも力が籠っており、また、臨場感に溢れているため、最後まで目が離せませんでした。最終章の残り20頁を切っても、空白の2日間の真実が見えてこず、必死に考えましたが、全く予想だにしない結末でした。 本書で横山作品3作目(出口のない海、ク…

クライマーズ・ハイ

非常に読み応えがありました。文章に一切遊びがなく、全ての描写に鬼気迫るものが感じられ、まさに迫真の作品でした。 主人公である悠木の優柔不断さには、何度もじれったさを感じました。しかし、最後の最後に、「俺は新聞を作りたいんだ。新聞紙を作るのは…

出口のない海

初の横山秀夫作品でしたが、完全に引き込まれました。 まず、本作品の舞台が生きたくても生きたい等と言うことが許されない、抗うことができない戦争が舞台であり、その中で、特攻兵器に搭乗しなければならない並木が、必死に生き、必死に考え、死ぬ覚悟を決…

銀翼のイカロス

半沢シリーズ4作目ですが、今回の半沢には貫禄さえ感じられ、シリーズ初期の頃にあった弱さや危うさが無くなってしまいったせいか、以前ほどの引き込みや感情移入はそれほどできませんでした。 しかしながら、随所に見せる半沢の男気ある決断(債権放棄の拒…

『銀翼のイカロス』読了

本日、『銀翼のイカロス』を読了しました! 半沢直樹の「倍返し」は炸裂したのか!? 後日、レビューをアップします。 さて、明日からは横山秀夫さんの『出口のない海』を読んでみたいと思います。 初横山作品であり、どれだけ引き込ませてくれるのか、非常…

夢のカルテ

第一章を読み始めたときには、心温まる恋愛小説なのかと思いましたが、クライエントの夢の内容はほとんどが殺人事件であり、また、夢の中だけに、感情や苦悩が剥き出しになっているため、サスペンス性を強く感じることができました。 また、本作品は短編集で…

『夢のカルテ』読了

昨日、高野和明さんの『夢のカルテ』を読了しました! 後日、レビューアップします。 これで、高野和明さんの作品は全て読破しました。 このあとは、池井戸潤さんの"半沢直樹シリーズ"最新作、『銀翼のイカロス』に突入したいと思います。 半沢直樹の専売特…

ジェノサイド

圧倒的なスケールであり、超大作だと感じました。 アメリカの情報機関やCIA、ゲノム創薬などの難しい題材を取り入れているにも関わらず、非常に丁寧に描写されているため、常に興味を持って深く入り込んでいくことができます。 虐殺のシーンでは残酷で忘…