これまで私が読んだ横山さんの作品の中では、珍しく読後感が心地よく感じられた一冊でした。
組織に媚びず、気骨と男気溢れる倉石の存在がそのように感じさせたのかも知れません。
本作品で特によかった章は『贐』です。小松崎親子の過去はとても暗く、悲壮感があり、胸苦しい思いすら感じさせます。しかしながら、倉石の一世一代の演出によって、小松崎の気持ちをも昇華させ、最後、涙ながらに花道を歩むシーンは思わず目頭が熱くなりました。
体の線は槍のように細い倉石ですが、骨太な男と感じさせるほど、魅力的で存在感のある男です。
読了日:2014年12月15日 著者:横山秀夫