地下鉄に乗って (講談社文庫)
本書は戦中・戦後を舞台に、時代の荒波に揉まれて変貌するアムールの生き抜く強さや、お時の人間的強さが絶妙に描かれています。
こうした絶妙な描写は、浅田氏自身がその時代に寄り添い、身を置くようにして考え抜いているからこそ、描くことができるのだと思います。
本書のクライマックスは、みち子が愛する母親の幸せと愛する恋人の幸せのどちらを選ぶかでした。
お時の一言により、みち子は恋人の幸せのため、自らの存在を消し去ることを決めました。2人の女性の強さと一途さを見せつけられたとともに、女の意地と凄さを見せつけられた思いです。
読了日:2016年4月6日 著者:浅田次郎