本書は4話が収録された短編集です。野球好きな私にとって、戦力外通告を受けたかつてのエースにスポットをあてた『曲球る』は興味深い作品でした。
全盛期と現在のフォームとの違いを化学的に分析し、狂いが生じていた感覚をもとに戻す手法には、なるほどと思わせるものがありました。
しかし、幾らフォームを正しても、そこに本人の情熱が戻らなければ、真の復活とはなりません。
その情熱を復活させるため、湯川が奔走し、真の復活のきっかけを与えた部分に、湯川の人間味が感じられ、化学と人情の融合の素晴らしさを感じます。
読了日:2017年1月28日 著者:東野圭吾