danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

銀行仕置人

主人公の黒部は、過去の池井戸作品の銀行ものの主人公である半沢、伊木、指宿等に負けず劣らず、正義感が強く、飾らず、己を貫く男であり、そのような男が大好きな私は本作品でも感情移入されました。最終話の"断罪"での立花に懐柔されそうなシーンにおいて…

金融探偵

シリアスさや、個々の登場人物の心情の奥深くまで踏み込んだ描写はそれほど無いものの、主人公が本職ではない探偵業の中で、思考錯誤しながら問題を解決していく様は興味を引き、軽快でさらっと読め、ただ単純に楽しく読むことができました。これまでの池井…

シャイロックの子供たち

第一話の内容から本物語の主役は古川で進行していくのかと思いきや、あっさりフェードアウトしてしまい、第二話~第四話では各所員の身上話で構成され、本物語の主役や方向性がよく分かりませんでしたが、第五話で西木が行方不明になって以降、徐々に物語の…

最終退行

第6章の出向辞令で蓮沼が胸の内で語った言葉『自分に嘘をつきたくない。だましだまし定年まで過ごすサラリーマン生活などもうごめんだ。俺は自分に正直に生きる。今まで、出世の事や家族のことを考え、本音もいえず、意に染まぬ仕事を続けてきた。だがそんな…

銀行狐

『不祥事』、『銀行総務特命』に続いて本作を読みました。本作は前2作のように、強烈な個性を持った主人公(花咲舞、指宿)が固定されていないため、主人公に感情移入して読み進めていく私としては、少々物足りなさを感じました。しかし、収録されている5…

MIST

第4章の「肝だめし」が終わる頃には引き込まれ、最後、いつもの池井戸作品のように、怒涛の引き込みが待っているものと期待していましたが、第5章の「霧の記憶」から何か展開がずれていくような感じがし、深く入り込むことができませんでした。リストの謎解…

仇敵

前職では組織の力に屈し、辞職を余儀なくされた恋窪。その恋窪が過去と決別し、庶務工員として人間らしい生き方を築き、歩んでいこうとします。しかし、過去は恋窪を容易に解放せず、また、ライバルであった桜井の死によって、再び、恋窪のプライドと戦う気…

BT’63

池井戸作品の代表作である「半沢直樹シリーズ」、「下町ロケット」等を読んできましたが、本「BT'63」が私が読んだ池井戸作品の中で一番面白く、一番よかったと思った作品でした。口下手で決して器用な生き方ができない史郎ですが、強い正義感と忍耐力を併…

果つる底なき

池井戸潤さんのデビュー作にして江戸川乱歩賞受賞作であり、予想通り面白かったです。冒頭の坂本の一言「これは貸しだからな」が頭から離れず、どんな展開が待っているのかと、のっけから期待感が膨らみました。本書は銀行の腐敗を内部から描いたミステリー…

銀行総務特命

『不祥事』を読み終わった際、『銀行総務特命』も期待して読んでみたい旨のコメントを書きましたが、本作はミステリー感やシリアスさもあり、とても面白く期待以上の作品でした。何かと目の敵にされている総務特命の指宿。"第6話の特命対特命"では、人事部の…

不祥事

自分が読んだ池井戸作品で初の短編集でした。個人的には、短編集より長編ものの作品の方が面白いと感じました。本作の『激戦区』の落ちについて、「私にも、お手伝いできると思います。あなたの抵抗に」との落ちは、何かすっきりしないという思いと物足りな…

架空通貨

企業城下町を舞台にしたミステリー作品ですが非常に面白かったです。 町全体が田神札に支配され、人々が翻弄されるという設定には少々無理があるのかもしれませんが、田神札という架空の通貨を題材としたアイデアは斬新であり、第一章の霧において、辛島が乗…

ルーズヴェルト・ゲーム

本作も面白い作品でした。少し残念だったのは、中盤にルーズヴェルト大統領が野球が一番面白いと言ったのは8対7との一言があり、最終章がルーズヴェルト・ゲームであれば、自ずと展開と結果が見えてしまった点です。エースの沖原が大量失点することは考え難…

ロスジェネの逆襲

森山と同様、まさにロスジェネ世代初期の私は就活当時の事を思い出しました。漫然と大手企業に入りたい等の感覚が無かった私は、自分の実力を評価してもらえる職場探しを行い、零細企業ですが、ぴったりの会社に就職することができました。その職場には私が…

オレたち花のバブル組

半沢の同期の近藤が統合失調症を克服し、最前線に戻ってきました。今作では精神の病を患った近藤が復活できるのかがずっと気になっていました。ただひたすら辛いだけの環境、耐えるだけの関係にピリオドを打てたのは、近藤が元来、持っている闘争心であった…

オレたちバブル入行組

「オレは基本的に性善説だ。相手が善意であり、好意を見せるのであれば、誠心誠意それにこたえる。だが、やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。」と半沢が語った言葉がありますが、この言葉はまさに私自身の性格や考え方に酷似した言葉であり衝撃を受け…

七つの会議

最後の八角が江木の嘘を暴くシーン(八角が作った偽物メール)は少々強引な感じがしましたが、全体を通して面白く、今回も引き込まれて、一気に読み終えてしまいました。池井戸作品3作目ですが、他の作品など、もっと読んでみたいと思いました。 七つの会議…

空飛ぶタイヤ

赤松社長、熱い男であり、男気を感じますね。しかし、これでもかとばかりに落としに掛かる大企業の策略、銀行の貸し渋り、風評被害など、こんな状況でも正義を貫き通せるのかと、本気で心配してしまう自分がおり、池井戸作品の引き込みの凄さに改めて驚きま…

下町ロケット

初めて読んだ池井戸潤さんの作品でしたが、ただ一言、面白い!! 初めから最後まで全て面白いと感じた小説は初めてでした。中小企業のもどかしさ、しかし、大企業に負けない確かな技術、不屈の精神力。そして、仕事に対するプライドは、何か自分自身が忘れか…