danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

2017-01-01から1年間の記事一覧

シャドウ (創元推理文庫)

落込みへのプロセスにおいて、強引さを感じる部分はあります。にも関わらず、満足感の方が上回ります。 なぜかと言えば、本書には、思わず唸るような巧緻性があったり、クライマックスが来たと思ったら、その後に真のクライマックスが用意されている等、読者…

上機嫌の作法 (角川oneテーマ21)

今まさに不機嫌の中心世代(45歳以上)に差し掛かろうとしています。私自身、全員に対して不機嫌ではないのです。たった1人。いや、少し広げて2・3人といったところです。 この不機嫌を脱しきれない要因は「ふっきれない」ところにあります。頭から離れず…

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)

本書の見せ場とクライマックスは、ヤミ金組織から大金を痛快に巻き上げる点にあるものとばかり思っていたところ、全くの見当違いでした。 残り数十頁に入ってから、テツさんが一世一代を掛けたアルバトロス作戦の真相が開示されていく様は本当に圧巻であり、…

月と蟹 (文春文庫)

本書は、慎一と春也と鳴海の3人のこども達の世界を描いた物語です。読みながら、私自身の小学生の頃の友人達(後に親友)と過ごした日々の記憶が呼び覚まされました。 当時、はっきり認識できていなかったものの、いま思えばこの時期に、心の痛みや切なさ、…

壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)

十数年ぶりの再読です。今回は息子の嘉一朗が本当に不憫に感じてなりませんでした。 貫一郎が犯した脱藩の罪をおのが罪として生き、その罪を償う事だけを考え続け、義のため戦場へと馳せ参じます。しかし、嘉一朗が今まさに果てんとする瞬間の回想シーンで戦…

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

過酷すぎる時代に高い志と覚悟を持ち続ける吉村父子の生き様は、生半可な覚悟しか持ち合わせていない私の心に深々と突き刺さります。 大義とは人の道であり、間違いだらけの世の中に向かって、いつもきっかりと正眼に構え、その構えだけが正しいと信じていた…

模倣犯〈上〉

本書では殺人犯が浩美と和明の複数犯であるということを早々に開示しますが、そんなことはさほど重要ではなく、そこに至るまでのプロセスをそれぞれの人物の心理描写を克明に描きながら興味深く開示していきます。 冒頭で登場した塚田真一は下巻でどんな役割…

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)

宮部みゆきの作品については、これまで『ソロモンの偽証』や『誰か』、『名もなき毒』、『ペテロの葬列』、『火車』等の代表作を中心に読んできました。 何れの作品とも内容が重く、救いようがなかったり、後味が悪かったりと、読後しばらくたっても胸に重く…

火車 (新潮文庫)

喬子の生き様は強烈です。事は父親の借金苦に端を発し、恐怖の取り立てに遭い、夜逃げによる一家離散。その後、両親は誘拐され、その心労が祟って母親は早くに亡くなり、さらに父親は廃人同様となります。 それでも取り立ては終わらず、喬子にこの状況を逃れ…

魔術はささやく (新潮文庫)

本物語では様々な人物の苦しみが表現されています。公金を横領した父親の蒸発により心に深い傷を負った守。守の父親をひき殺しながら生涯隠ぺいし続ける決意をした吉武浩一。 とりわけ、この二人の苦悩は計り知れません。菅野洋子の交通事故死というプロセス…

スナーク狩り (光文社文庫プレミアム)

妻子を殺められた織口が殺害者の真の姿を暴き、裁きを下さんと銃口を向けたとき「撃て」「殺れ」と強く念じている私がいました。 状況説明も兼ねた範子の心理描写が迫りくるような臨場感に溢れており、そのため、こうした心境になったわけです。また、今まさ…

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

アドラーを理解するための根幹は「愛」であり、アドラーの語る愛ほど厳しく勇気を試される課題はありません。 本当の愛を知ったとき、「わたし」だった人生の主語は「わたしたち」に変わると言います。愛とはふたりで成し遂げる課題であり、自己中心性から脱…

プラチナデータ (幻冬舎文庫)

本書で興味を惹かれたのは、事件の真相に至る経緯等ではなく、DNAプロファイリングであり、現実社会でどこまで利用可能になっているのかといった部分です。 プロファイリング結果により、身体的特徴が明確に分かるものなのか。容貌に関して再現できるという…

じぶん・この不思議な存在 (講談社現代新書)

"わたしというものは、他者の他者としてはじめて確認されるものだ"ということが本著者が最も主張したいことだったのだろうか。 確かに"他者にとって意味のある他者たりえているか"を考えてみると、自分が思っている自己価値や自己評価並びに存在感に対して、…

片想い (文春文庫)

本書は性同一性障害やジェンダー、半陰陽といったある種タブー視されている部分にスポットがあてられ、そこに生きる者達の苦悩を片思いという言葉で見事に表現した物語です。 性同一性障害者に限らず、人は瞬間的に気持ちが男よりになったり、女よりになった…

日常の小さなイライラから解放される「箱」の法則―感情に振りまわされない人生を選択する

本書を読んでいる最中、突如、私は過去に箱から出て問題解決を実現していたことを自覚しました。 8年ほど前、私は前職の同僚に対し箱に入っていました。同僚は職場の全員に対し自己主張を無理強いする我儘な人間だと思っていました。しかし、あるとき同僚の…

2日で人生が変わる「箱」の法則

前作で気に掛かったのは、相手が箱の中に居続ける場合の平和な心の維持の仕方です。 今作では、澄んだ平和な心を取り戻し、かつ、それを維持し続ける手法として、最もよい影響を与えてくれている人達のことなどを意識して考えることの重要性などが説かれてい…

自分の小さな「箱」から脱出する方法

人は自分の感情に背いたときから自分への裏切りが始まり箱の中に入ってしまいます。すると、正当化してくれる根拠になりそうな物の価値を過大に評価し箱の中に留まります。まさしく、私も同様の問題を抱えています。 この問題は対人関係において発生します。…

鳥人計画 (角川文庫)

本書における真犯人がまさかの楡井の彼女であった点には驚きました。しかしながら、序盤の彼女の心理描写を踏まえて犯人だと特定することはできず、若干、無理があると感じました。 振り返ってみて、伏線と思しきものが幾つか提起されてはいますが分かりにく…

魔球 (講談社文庫)

刺殺事件における「魔球」という謎のメッセージや、謎解きの真相に斬りこんでいく刑事の描写などを見るにつけ、次第に強烈に惹き込まれていく自分がいました。 須田武志の生き様は強烈です。母親になんとしても恩を返すという信念、恩を返す手段として野球に…

禁断の魔術―ガリレオ〈8〉

本書は4話が収録された短編集です。野球好きな私にとって、戦力外通告を受けたかつてのエースにスポットをあてた『曲球る』は興味深い作品でした。 全盛期と現在のフォームとの違いを化学的に分析し、狂いが生じていた感覚をもとに戻す手法には、なるほどと…

アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉

本書は端的にまとめられ、勇気づけや実りのある人生とするためのたくさんの術が示されています。ところが、せっかく得た術なども往々にして実践できず、延々と模索し続けてしまうのが現状だと思います。 結局のところ、実践できるかできないかは、その人の決…

虚像の道化師 ガリレオ 7

本書における『幻惑す』と『心聴る』は、心霊的な力が働いているかのように見せかける巧妙なトリックが仕組まれ、これまでのガリレオシリーズには無かった新たな仕掛けとなっていました。 また、『偽装う』と『演技る』は、殺人を犯していない第三者が手を加…