danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

賢者はベンチで思索する (文春文庫)

本書には、難解で複雑なミステリー要素はありません。代りに、主人公の久里子と謎めいた老人との関わりを持たせたことで、この老人の存在が妙に頭に残るようになります。 そして、物語が進むにつれ、老人の存在感が際立ってくると、いよいよこの老人が何者な…

三つの名を持つ犬 (徳間文庫)

この物語が俄然面白くなってきたのは、振込め詐欺の末端要員である江口が登場してからです。 この江口は、親が残してくれたお金を投資とも言えない博打で溶かしてしまいます。世間を舐め、自堕落な生活を過ごした結果、底辺から這い上がれない状況となります…

ダークルーム (角川文庫)

各作品によって、読み易さや惹き込まれ具合に差があるなと思っていたら、1994年~2011年までの間の作品が収録されており、最近に近づくにつれ、読み易さや巧さが感じられました。 印象的だった作品は『北緯六十度の恋』です。 冒頭の「憎しみに囚われるのは…

Shelter(シェルター) (祥伝社文庫)

本書においては「心の痛み」を感じずにはいられない作品でした。 なぜ、私自身が痛みを感じるのか。歩と恵との関係における痛みは、傷つけてしまった一言や行動に対する後悔や胸に残る遣る瀬無さです。 私自身、家族や兄弟との間で、後悔している一言や後悔…