danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

2016-01-01から1年間の記事一覧

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー3作目となる本書で学んだのは「相手の適切な行動に注目する」ことです。 人間の悩みの大半は『対人関係である』と言われています。他人との関わりを避けることはできず、相手が自分の思惑通りにならないと嫌な部分だけがクローズアップされがちです…

ガリレオの苦悩 (文春文庫)

本書において、最も興味深かった作品は『操縦る』でした。 全ては奈美恵の幸せを確保するために、幸正自らが不実を働く息子を殺めて、財産を譲るための障害を取り除きます。同時に介護生活からも解放させ、さらには、罪をより重くするために情状酌量を望まず…

アドラー心理学 実践入門---「生」「老」「病」「死」との向き合い方 (ワニ文庫)

本書は、生・老・病・死という4つの切り口から幸福に生きていくためのヒントを与えてくれますが、最後の一文において、私自身が取り組むべき指針が明確になった気がします。 幸福になりたい、人生をよくしたい、自分を変えたい等の願望を達成する、或いは、…

真夏の方程式 (文春文庫)

殺害の一端として利用された事実を知ってしまった恭平少年。それも、身内の人間に利用されてのことです。 恭平少年の心には、生涯、誰にも言えず、癒されることの無い深い傷が刻まれることになると思いました。ところが、湯川の次の一言によって、この救いよ…

人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)

職場の上司に対する問題を抱えていたことから、職場のイライラを中心に読み進めました。そこには、上司の屈折した承認欲求の記述があります。まさに今の私が直面している問題です。 そんな上司に屈せず立ち向かってきたものの、心の奥底では不安や恐れがあっ…

聖女の救済 (文春文庫)

冒頭の綾音の心情描写より、綾音が夫を殺害したのは明白でありながら、その真相が開示されるまでの経緯はなんとなく間延びしていて、盛り上がりやスリリングさを欠いている印象を受けました。 また、草薙の心が揺さぶられるほど綾音に魅せられた理由もよく分…

容疑者Xの献身 (文春文庫)

思い込みによる盲点をついた石神のトリックに心底、唸らされました。事前に「幾何の問題に見せかけて、じつは関数の問題である」と語っており、ヒントが開示されていますが、想像外、見事な落し込みというしかありません。 靖子と深い関りもない石神がそこま…

むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)

山奥にひっそり建てられた謎の異国調の家において、一冊の少年の日記が発見されます。 日記に描かれている事柄は、その家に残されていた遺品から二十年以上も前に起きた出来事であったと想像されます。ところが、電気も通っていないその家で、日記に描かれた…

探偵ガリレオ (文春文庫)

加賀恭一郎シリーズを読破し、満を持してガリレオシリーズに突入しました。 シリーズ第一作目である本書では、読む者を唸らせるようなインパクトのある作品はありませんでした。 しかしながら、本書に収録されている5作品は全て科学技術を駆使したトリック…

祈りの幕が下りる時

本書の主旨とはずれるものの、個人的に目がいったのは、長年、ヴェールに包まれていた加賀の母親の失踪の真相が遂に明らかになったことです。 加賀の父親は言葉足らずな男ではあったものの、DVを働いたり、家庭を全く顧みないような男ではなかった為、母親…

麒麟の翼 (講談社文庫)

加賀恭一郎シリーズである本書ものっけから惹きこまれました。 瀕死の状態でありながら、麒麟像までたどり着き息絶えだいた青柳、その青柳の所持品を持って事故死した容疑者と考えられる八島、被害者・容疑者ともに死人に口なしのため、先の展開が全く読めま…

新参者 (講談社文庫)

本書は短編集ですが、どの話も女性が絞殺された事件を根幹とし、そこに関わる人々の人情と事件とが絶妙に絡み合う構成となっています。 最終章において、犯人の動機が息子の金銭問題に端を発したものであろうと推測された時は、何か締まりのない幕引きに感じ…

赤い指 (講談社文庫)

幼い子を持つ親や、閉じこもりの子を持つ親、或いは、認知症の家族を抱える者などにとっては、本書は決して他人事として読むことができない作品であると感じました。 本事件において、昭夫を真人間として踏みとどまらせた加賀の行為は温かみに満ちていました…

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)

本書は加賀恭一郎シリーズ初の短編集でした。短編集がゆえに要点が絞られており、加賀の敏腕ぶりがより際立っています。本書で最も印象的だった作品は『友の助言』です。 睡眠薬を仕込んだ犯人が誰であるかが開示されるだけに留まらず、犯人特定の一条件とし…

私が彼を殺した (講談社文庫)

加賀恭一郎シリーズは、毎回、物語のパターンや趣向に工夫が成されており、このシリーズに対する作者の意気込みやチャレンジ精神がよく伝わってきます。 今回は、三人の容疑者による一人称一視点により物語が進行していきます。できる限り隈なく読み進めてみ…

悪意 (講談社文庫)

これまでのシリーズは、誰が犯人であるのかを推察・特定することに主眼がおかれていました。ところが、本書では序盤で早くも犯人が特定されます。 本書の主たるポイントは犯人探しではなく、稀に見る動機探しとなっており、これまでにない趣向が凝らされてい…

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

加賀恭一郎シリーズ3作目における本書では、1・2作目にはなかった臨場感や疾走感、さらに、読む者の心に食い込むような圧迫感があり、かなり惹きこまれました。 六章において、薗子の部屋に、康正、加賀、容疑者(2人)の4人が集結し、それぞれの抗弁や…

眠りの森 (講談社文庫)

「卒業」と比べると惹きつけられた部分もありました。また、今回、加賀に対する見方が変わり、意外にも人間くさく人の好さが垣間見れたところに親近感を覚えました。 なお、本書の事件の真相が開示されるシーンに関して、思わず唸ってしまうような絶妙さだっ…

卒業 (講談社文庫)

加賀恭一郎シリーズの初読です。 東野氏の作品はこれまで「秘密」や「白夜行」、「幻夜」等の話題作を中心に読んでいたため、デビュー後間もない本作品は、とにかく読み辛く感じました。 しかしながら、様々な人物達の発言や行動が事件の解明に明確に繋がっ…

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫)

第1章~第5章の「殺しの・・・」から始まる表題は、その章の要旨を端的に捉えているため、展開を予測しながら読み進めることができます。 また、ほどよい臨場感とスピード感を備えており、読むものを飽きさせません。 さらに、特筆すべきは、本書のクライ…

幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))

物語の展開や内容は面白かったのだが、落とし込みへと向かっていく様が前作(白夜行)とよく似ていたため、結末が容易に想像できてしまったのは残念だった。 また、多くの謎を残し過ぎた点に関して、モヤモヤ感が残った。 美冬への成り代わりは震災という偶…

白夜行 (集英社文庫)

本書は冒頭の殺人事件直後から、様々な人物が登場し、年月もどんどん経過し、話の内容もあらゆる方向へと展開します。 中盤過ぎに探偵の今枝が登場すると、俄然、スリリングさが増します。そして、一見すると物語の重要人物と思われる人達が単なる伏線要員で…

天空の蜂 (講談社文庫)

事件発生から収束までの時間が僅か10時間余りだった点を踏まえると、疾走感はそれほど感じられませんでした。しかし、物語自体は非常に読ませる作品であったと感じました。 作者は当時既に原発に対する危機的意識を持っていて、沈黙する群衆に対して敢然と…

秘密 (文春文庫)

東野氏の作品から共通して感じるのは、クライマックスに至る場面において、無駄な表現が無く端的であるということです。 また、一気にフェードアウトしていく様は実に絶妙です。本書においても、直子の別れの言葉は「ありがとう。さようなら。忘れないでね。…

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)

本書には様々な人物達が登場します。一見すると、その人物達の接点は見当たりません。ところが、各章を追うごとに、それぞれの接点が見出され、最終的に全ての繋がりが丸光園とナミヤ雑貨店にあった点が開示される様は圧巻でした。 個人的にミュージシャンの…

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

15年以上ぶりの再読です。本書には、涙なしでは読めない作品ばかりが収録されています。 最も印象的な作品は当時と同様、『ラブ・レター』でした。大の男の吾郎が、こどものように泣きじゃくる心境が私には分かります。 私自身、過去に祖父を亡くした際、…

時生 (講談社文庫)

前作でタイムスリップものの良作を読んでいたことから、それほど期待を持たずに本書を読み始めました。 ところが、花やしきのシーンから始まる怒涛の疾走感などから、非常に読ませる作品であると感じました。 何を仕出かすか分からない拓実の言動には、未来…

地下鉄に乗って (講談社文庫)

本書は戦中・戦後を舞台に、時代の荒波に揉まれて変貌するアムールの生き抜く強さや、お時の人間的強さが絶妙に描かれています。 こうした絶妙な描写は、浅田氏自身がその時代に寄り添い、身を置くようにして考え抜いているからこそ、描くことができるのだと…

三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)

約20年振りの再読です。今でこそ、平成の泣かせ屋の異名をとる浅田氏ですが、当時はそんな異名もなく、『地下鉄に乗って』も『鉄道屋』も『壬生義士伝』もまだ生まれていません。 しかし、浅田氏には当時から抜きん出ているものがありました。それは、どの…

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

超知能を得たチャーリーが特に苦悩したのは、彼に関わってきた人達への愛憎の気持ちだったと思います。彼が白痴の時、憎しみを感じたことはありません。 ところが、彼の潜在意識下では愛に対する飢えを感じ、それは、痛みとして刻まれていました。超知能を得…