新参者 (講談社文庫)
本書は短編集ですが、どの話も女性が絞殺された事件を根幹とし、そこに関わる人々の人情と事件とが絶妙に絡み合う構成となっています。
最終章において、犯人の動機が息子の金銭問題に端を発したものであろうと推測された時は、何か締まりのない幕引きに感じられました。
しかし、真の幕引きは、その先に待っていました。
唯一人、被疑者の口を割らせるだけの辛い過去を持つ上杉が、被疑者に対し、「たとえ憎まれても、親は子供を正しい方向に導いてやらなければならない」と言った言葉は、被疑者の気持ちを昇華させるに十分値するものだと感じました。
読了日:2016年9月8日 著者:東野圭吾