danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

私が彼を殺した (講談社文庫)

加賀恭一郎シリーズは、毎回、物語のパターンや趣向に工夫が成されており、このシリーズに対する作者の意気込みやチャレンジ精神がよく伝わってきます。

今回は、三人の容疑者による一人称一視点により物語が進行していきます。できる限り隈なく読み進めてみたものの、犯人を特定することはできず、真相に迫るには至りませんでした。

加賀及び容疑者三人が一堂に介し、容疑者達の二重・三重の殺害トリックが明かされるシーンは巧妙さを感じさせます。なお、犯人は神林或いは、まさかの美和子であった方がよりインパクトを与えられたのではと思います。  

私が彼を殺した (講談社文庫)

私が彼を殺した (講談社文庫)

 

読了日:2016年8月21日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

悪意 (講談社文庫)

これまでのシリーズは、誰が犯人であるのかを推察・特定することに主眼がおかれていました。ところが、本書では序盤で早くも犯人が特定されます。

本書の主たるポイントは犯人探しではなく、稀に見る動機探しとなっており、これまでにない趣向が凝らされていました。

犯人の動機とは何か?しかし、死人に口なし状態のため、加賀も、我々読者も翻弄され続けます。そうした中、加賀の記録・独白・回想を読むにつけ、犯人の言動の矛盾や綻びが判明し、真の動機が明らかとなるプロセスは圧巻です。

加賀の刑事としての鋭さと凄味が増し、惹きつけられます。 

悪意 (講談社文庫)

悪意 (講談社文庫)

 

読了日:2016年8月7日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

加賀恭一郎シリーズ3作目における本書では、1・2作目にはなかった臨場感や疾走感、さらに、読む者の心に食い込むような圧迫感があり、かなり惹きこまれました。

六章において、薗子の部屋に、康正、加賀、容疑者(2人)の4人が集結し、それぞれの抗弁や鬩ぎあいが行われると、読むスピードは最高速に達し、先読みしてしまいたくなったほどです。

康正の秀でた推察力によって犯人が誰であるのかの確信が得られていく様と、証拠が隠滅された状況だったにも関らず、加賀の鋭い着眼点によって事件の真相が掴まれていく様は、実に見応えがありました。

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

 

 読了日:2016年7月30日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

眠りの森 (講談社文庫)

「卒業」と比べると惹きつけられた部分もありました。また、今回、加賀に対する見方が変わり、意外にも人間くさく人の好さが垣間見れたところに親近感を覚えました。

なお、本書の事件の真相が開示されるシーンに関して、思わず唸ってしまうような絶妙さだったり、驚きといったものは残念ながら感じられませんでした。

90年代半ば以降の氏の作品と比べると、総じて、臨場感や疾走感に欠け、読者の心に迫ってくるような圧倒感がまだありません。

ただし、本シリーズに対する期待感は高まっており、次回作では満足感が得られるものと期待しています。

眠りの森 (講談社文庫)

眠りの森 (講談社文庫)

 

読了日:2016年7月26日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

卒業 (講談社文庫)

加賀恭一郎シリーズの初読です。

東野氏の作品はこれまで「秘密」や「白夜行」、「幻夜」等の話題作を中心に読んでいたため、デビュー後間もない本作品は、とにかく読み辛く感じました。

しかしながら、様々な人物達の発言や行動が事件の解明に明確に繋がっていく様は、現在の氏が得意とする伏線回収スタイルの源になっていると感じた次第です。

また、一番知りたかった本事件の根本的原因について、「俺自身も気づいていなかった。俺は決して彼女を許してなどいなかったということに。」と表した一文も、氏らしく端的さを感じさせるものでした。 

卒業 (講談社文庫)

卒業 (講談社文庫)

 

読了日:2016年7月11日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫)

第1章~第5章の「殺しの・・・」から始まる表題は、その章の要旨を端的に捉えているため、展開を予測しながら読み進めることができます。

また、ほどよい臨場感とスピード感を備えており、読むものを飽きさせません。

さらに、特筆すべきは、本書のクライマックスにおける締め括りかたです。

まさに最高潮を迎えた刹那の幕引きとなります。通常であれば、クライマックスのシーンを踏まえて、その後の状況や経緯が解説され、余韻に浸りながらまとめられて行きますが、この幕引きこそが東野さんならではの拘りであり、美学であると感じる次第です。 

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫)

ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫)

 

 読了日:2016年6月29日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))

物語の展開や内容は面白かったのだが、落とし込みへと向かっていく様が前作(白夜行)とよく似ていたため、結末が容易に想像できてしまったのは残念だった。

また、多くの謎を残し過ぎた点に関して、モヤモヤ感が残った。

美冬への成り代わりは震災という偶然の産物だったのか?人を欺き、陥れ、殺める、そして、整形までするほど美冬の過去は壮絶なものだったのか?上昇志向の真の目的・到達点は一体どこにあり、何であるのか?

なお、本シリーズは3部作の話が出ているようだが、結末は、いずれも報われない男と上昇し続ける女という構図になるのか?

幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))

幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))

 

読了日:2016年6月23日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

白夜行 (集英社文庫)

本書は冒頭の殺人事件直後から、様々な人物が登場し、年月もどんどん経過し、話の内容もあらゆる方向へと展開します。

中盤過ぎに探偵の今枝が登場すると、俄然、スリリングさが増します。そして、一見すると物語の重要人物と思われる人達が単なる伏線要員でしかなく、終盤に進むに従い、バッサバッサと切り捨てられいく様は圧巻です。

物語中、殺人事件に関わっていたはずの桐原と雪穂が交わる描写は最後までありません。そこが、オブラートに包まれ、19年間、お互いをどんな気持ちで見つめ合い、想いを馳せていたのか、想像を掻き立てられます。

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

 

読了日:2016年6月9日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

天空の蜂 (講談社文庫)

事件発生から収束までの時間が僅か10時間余りだった点を踏まえると、疾走感はそれほど感じられませんでした。しかし、物語自体は非常に読ませる作品であったと感じました。

作者は当時既に原発に対する危機的意識を持っていて、沈黙する群衆に対して敢然と問題点を投げ掛けています。そして、三島が最後に発した「そのことにいずれみんなが気がつく」という言葉は心胆寒からしめるものでした。

まさに、東日本大震災において、現実のものとなっています。

本書を通じて、我々自身が考え、道を選んでいかなければならないことを痛切に感じた次第です。

天空の蜂 (講談社文庫)

天空の蜂 (講談社文庫)

 

読了日:2016年5月27日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

秘密 (文春文庫)

東野氏の作品から共通して感じるのは、クライマックスに至る場面において、無駄な表現が無く端的であるということです。

また、一気にフェードアウトしていく様は実に絶妙です。本書においても、直子の別れの言葉は「ありがとう。さようなら。忘れないでね。」だけですが、これ以上ない表現です。

そして、真の秘密が明らかになり、平介が泣きじゃくって終わってしまうラストは、置いてけぼりされた気分になり、こんな切ない状況のままで終わらせないでくれ!と思ってしまうほどです。

東野氏の端的な表現と最後に読者の心を鷲掴みする力量に脱帽です。 

秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)

 

読了日:2016年5月11日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)

本書には様々な人物達が登場します。一見すると、その人物達の接点は見当たりません。ところが、各章を追うごとに、それぞれの接点が見出され、最終的に全ての繋がりが丸光園とナミヤ雑貨店にあった点が開示される様は圧巻でした。

個人的にミュージシャンの非業の死はいたたまれませんでした。しかしながら、後世に残る名曲を生み出した点において、決して負け戦ではなかったと考えます。

天才女性アーティストによって引き継がれたこの名曲は、やがてミュージシャンの父親の耳にも届き、息子が残した大きな足跡をしっかり感じ取ったと考えます。

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)
 

読了日:2016年4月27日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

15年以上ぶりの再読です。本書には、涙なしでは読めない作品ばかりが収録されています。

最も印象的な作品は当時と同様、『ラブ・レター』でした。大の男の吾郎が、こどものように泣きじゃくる心境が私には分かります。

私自身、過去に祖父を亡くした際、式中は涙など出なかったのですが、控室に戻り、故人の笑顔の写真を見た瞬間から不意に涙が溢れ出し、どうにもこうにも止めることができず、何時間も泣きじゃくったことがあります。

この吾郎の描写は、浅田氏自身がその心情を分かっていて描いたであろうことが推察され、より心に響きました。

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)

 

読了日:2016年4月21日 著者:浅田次郎

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

時生 (講談社文庫)

前作でタイムスリップものの良作を読んでいたことから、それほど期待を持たずに本書を読み始めました。

ところが、花やしきのシーンから始まる怒涛の疾走感などから、非常に読ませる作品であると感じました。

何を仕出かすか分からない拓実の言動には、未来を変えてしまいかねない危うさがあり、その未来から来た息子の時生が必死に立ち回る様を見るにつけ、ヤキモキさせられます。

東条須美子との和解や、時生が去ってゆく場面など泣かせるシーンがありました。しかし、最後の「トキオっ、花やしきで待ってるぞ」の言葉は、とりわけ胸に響きました。 

時生 (講談社文庫)

時生 (講談社文庫)

 

読了日:2016年4月17日 著者:東野圭吾

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

地下鉄に乗って (講談社文庫)

本書は戦中・戦後を舞台に、時代の荒波に揉まれて変貌するアムールの生き抜く強さや、お時の人間的強さが絶妙に描かれています。

こうした絶妙な描写は、浅田氏自身がその時代に寄り添い、身を置くようにして考え抜いているからこそ、描くことができるのだと思います。

本書のクライマックスは、みち子が愛する母親の幸せと愛する恋人の幸せのどちらを選ぶかでした。

お時の一言により、みち子は恋人の幸せのため、自らの存在を消し去ることを決めました。2人の女性の強さと一途さを見せつけられたとともに、女の意地と凄さを見せつけられた思いです。 

地下鉄に乗って (講談社文庫)

地下鉄に乗って (講談社文庫)

 

読了日:2016年4月6日 著者:浅田次郎

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ

三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)

約20年振りの再読です。今でこそ、平成の泣かせ屋の異名をとる浅田氏ですが、当時はそんな異名もなく、『地下鉄に乗って』も『鉄道屋』も『壬生義士伝』もまだ生まれていません。

しかし、浅田氏には当時から抜きん出ているものがありました。それは、どの作家さんよりも人一倍笑わせてくれる所です。

本書に登場する悪漢3人組は非常にキャラが立っており、それぞれが持ち合わせている妙な義理堅さや生真面目さ、破天荒さが一一笑わせてくれます。

直木賞受賞以降の作品しか知らない人達に是非、もう一つの浅田氏の凄さを知ってもらいたいです。  

三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)

三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)

 

読了日:2016年4月1日 著者:浅田次郎

 

にほんブログ村 小説ブログ 長編小説へにほんブログ村 酒ブログ 酒のウンチクへ