真夏の方程式 (文春文庫)
殺害の一端として利用された事実を知ってしまった恭平少年。それも、身内の人間に利用されてのことです。
恭平少年の心には、生涯、誰にも言えず、癒されることの無い深い傷が刻まれることになると思いました。ところが、湯川の次の一言によって、この救いようのない状況に光明を与えてくれました。
「私は君と一緒に同じ問題を抱え、悩み続けよう。忘れないで欲しい。君はひとりぼっちじゃない」と。
シリーズが進むごとに人間臭さ、人情味が増していく湯川。少年が何れ答えを出す日がくるとき、言葉通り、湯川が最善を尽くす姿が目に浮かんできます。
読了日:2016年12月4日 著者:東野圭吾
人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)
職場の上司に対する問題を抱えていたことから、職場のイライラを中心に読み進めました。そこには、上司の屈折した承認欲求の記述があります。まさに今の私が直面している問題です。
そんな上司に屈せず立ち向かってきたものの、心の奥底では不安や恐れがあった点は否めず、我慢を強いられてきました。
この問題の解決策は次の通りでした。上司は変えられないため、動じない自分になること、そして、普通に接するという2点です。早速、実践しました。
この2点を意識しただけで、感情が高ぶらず冷静になれ、結果、動じず、上司は気が抜けた様子でした。
人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学 (中公新書ラクレ)
- 作者: 岸見一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/10/14
- メディア: Kindle版
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読了日:2016年12月1日 著者:岸見一郎
聖女の救済 (文春文庫)
冒頭の綾音の心情描写より、綾音が夫を殺害したのは明白でありながら、その真相が開示されるまでの経緯はなんとなく間延びしていて、盛り上がりやスリリングさを欠いている印象を受けました。
また、草薙の心が揺さぶられるほど綾音に魅せられた理由もよく分かりませんでした。
ただし、殺害のトリックに関しては、よく考えられたものであると感心した次第です。
1年前に浄水器に毒物を仕込み、1年間それを誰にも触らせず、それをやり遂げた執念、そんな事はあり得ないと感じた後に、いやあり得るかもしれないと思わせてしまう落し込みに脱帽です。
読了日:2016年11月10日 著者:東野圭吾
容疑者Xの献身 (文春文庫)
思い込みによる盲点をついた石神のトリックに心底、唸らされました。事前に「幾何の問題に見せかけて、じつは関数の問題である」と語っており、ヒントが開示されていますが、想像外、見事な落し込みというしかありません。
靖子と深い関りもない石神がそこまでして、身代りになる事なんてあり得るのか?
私はありだと思います。「人は時に健気に生きているだけで誰かを救っていることがある」この言葉に頷けます。
自ら退路を断った石神ですが、靖子は真人間として真実を告白します。石神の心に去来するのは、無念の思いだけなのか?私には解りません。
読了日:2016年10月28日 著者:東野圭吾
むかし僕が死んだ家 (講談社文庫)
山奥にひっそり建てられた謎の異国調の家において、一冊の少年の日記が発見されます。
日記に描かれている事柄は、その家に残されていた遺品から二十年以上も前に起きた出来事であったと想像されます。ところが、電気も通っていないその家で、日記に描かれた事柄が到底あったとは思えません。
その矛盾は一体どこからくるのか?そもそも、人気のないこの場所になぜその家が建てられたのか?様々な疑問と謎に包まれていて惹きつけられます。
周到に張り巡らされた伏線を経て、その家の存在理由が明らかとなる驚愕の事実は想像を超えるものでした。
読了日:2016年10月23日 著者:東野圭吾
探偵ガリレオ (文春文庫)
加賀恭一郎シリーズを読破し、満を持してガリレオシリーズに突入しました。
シリーズ第一作目である本書では、読む者を唸らせるようなインパクトのある作品はありませんでした。
しかしながら、本書に収録されている5作品は全て科学技術を駆使したトリックであり、科学技術に精通した知識が無ければ成り立たない作品群です。
それを納得できる形のトリックにまとめ上げられているところに作者の力量を感じさせます。
この先には、直木賞受賞作である『容疑者Xの献身』が控えており、一体どのようにグレードアップして、そこへと至るのか興味深いです。
読了日:2016年10月15日 著者:東野圭吾
麒麟の翼 (講談社文庫)
新参者 (講談社文庫)
本書は短編集ですが、どの話も女性が絞殺された事件を根幹とし、そこに関わる人々の人情と事件とが絶妙に絡み合う構成となっています。
最終章において、犯人の動機が息子の金銭問題に端を発したものであろうと推測された時は、何か締まりのない幕引きに感じられました。
しかし、真の幕引きは、その先に待っていました。
唯一人、被疑者の口を割らせるだけの辛い過去を持つ上杉が、被疑者に対し、「たとえ憎まれても、親は子供を正しい方向に導いてやらなければならない」と言った言葉は、被疑者の気持ちを昇華させるに十分値するものだと感じました。
読了日:2016年9月8日 著者:東野圭吾
赤い指 (講談社文庫)
嘘をもうひとつだけ (講談社文庫)
本書は加賀恭一郎シリーズ初の短編集でした。短編集がゆえに要点が絞られており、加賀の敏腕ぶりがより際立っています。本書で最も印象的だった作品は『友の助言』です。
睡眠薬を仕込んだ犯人が誰であるかが開示されるだけに留まらず、犯人特定の一条件として、冒頭で触れていた息子の絵の話しと、被害者の萩原が描いた魚の絵の向きとをリンクさせた点は着眼点として面白く、また、殺人手段が未必の故意に留まっている点は意外性を感じさせます。
最後、萩原が妻に「もう来なくていい」と言った言葉には、男のやるせなさが如実に伝わってきました。
読了日:2016年8月27日 著者:東野圭吾
私が彼を殺した (講談社文庫)
加賀恭一郎シリーズは、毎回、物語のパターンや趣向に工夫が成されており、このシリーズに対する作者の意気込みやチャレンジ精神がよく伝わってきます。
今回は、三人の容疑者による一人称一視点により物語が進行していきます。できる限り隈なく読み進めてみたものの、犯人を特定することはできず、真相に迫るには至りませんでした。
加賀及び容疑者三人が一堂に介し、容疑者達の二重・三重の殺害トリックが明かされるシーンは巧妙さを感じさせます。なお、犯人は神林或いは、まさかの美和子であった方がよりインパクトを与えられたのではと思います。
読了日:2016年8月21日 著者:東野圭吾
悪意 (講談社文庫)
これまでのシリーズは、誰が犯人であるのかを推察・特定することに主眼がおかれていました。ところが、本書では序盤で早くも犯人が特定されます。
本書の主たるポイントは犯人探しではなく、稀に見る動機探しとなっており、これまでにない趣向が凝らされていました。
犯人の動機とは何か?しかし、死人に口なし状態のため、加賀も、我々読者も翻弄され続けます。そうした中、加賀の記録・独白・回想を読むにつけ、犯人の言動の矛盾や綻びが判明し、真の動機が明らかとなるプロセスは圧巻です。
加賀の刑事としての鋭さと凄味が増し、惹きつけられます。
読了日:2016年8月7日 著者:東野圭吾
どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)
加賀恭一郎シリーズ3作目における本書では、1・2作目にはなかった臨場感や疾走感、さらに、読む者の心に食い込むような圧迫感があり、かなり惹きこまれました。
六章において、薗子の部屋に、康正、加賀、容疑者(2人)の4人が集結し、それぞれの抗弁や鬩ぎあいが行われると、読むスピードは最高速に達し、先読みしてしまいたくなったほどです。
康正の秀でた推察力によって犯人が誰であるのかの確信が得られていく様と、証拠が隠滅された状況だったにも関らず、加賀の鋭い着眼点によって事件の真相が掴まれていく様は、実に見応えがありました。
読了日:2016年7月30日 著者:東野圭吾
眠りの森 (講談社文庫)
「卒業」と比べると惹きつけられた部分もありました。また、今回、加賀に対する見方が変わり、意外にも人間くさく人の好さが垣間見れたところに親近感を覚えました。
なお、本書の事件の真相が開示されるシーンに関して、思わず唸ってしまうような絶妙さだったり、驚きといったものは残念ながら感じられませんでした。
90年代半ば以降の氏の作品と比べると、総じて、臨場感や疾走感に欠け、読者の心に迫ってくるような圧倒感がまだありません。
ただし、本シリーズに対する期待感は高まっており、次回作では満足感が得られるものと期待しています。
読了日:2016年7月26日 著者:東野圭吾