danyromero’s diary

小説のレビューおよび、時々お酒のウンチクもアップしています。

はぶらし

これほどまでに、じれったくて、歯がゆくて、なんとも言えず、早く読み進めてすっきりしたいと思ってしまう作品は初めてでした。

居候状態となった水絵には過去に盗みの常習などがあったことから、水絵には居候以外の目的もあるのか、そして、鈴音の好意に付け込んで何か陥れようとしているのか、それとも、現在は改心して何事もなく無事に家を出て行ってくれるのか、さまざまな疑心暗鬼に囚われました。

水絵が鈴音に対してだけは盗みを働かなかったのは、水絵が過去に鈴音に抱いた好感に基づき、決して侵してはならない領域であったのだと思います。 

はぶらし

はぶらし

 

読了日:2015年9月30日 著者:近藤史恵

 

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砂漠の悪魔

榊原の自殺によって広太の人生は急変し、ヤクザに脅され抗うことさえできずに破滅の道へと進んでいきます。

ところが、異国の地で同じ日本人の雅之と出会い、人の命の軽さを知り、自分の権利は自分で守っていく姿などを目の当たりにすることで、慄いてばかりいた広太の気持ちに筋金が入っていく様は見応えがありました。

最後、砂漠の悪魔に取り憑かれますが、その悪魔と対峙することを決意した広太にとって、もはやヤクザは脅威ではありません。

抜けた髪を束にして佐々に投げつけたシーンは、生きる強さを知った広太の凄味を感じさせるシーンでした。 

砂漠の悪魔

砂漠の悪魔

 

読了日:2015年9月26日 著者:近藤史恵

 

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キアズマ

近藤史恵さんはつくづく不思議な作家さんです。

女性でありながら、男性でなければ決して分からないような気持ちや心境まで実によく表現されています。

レースにかける意気込みや思いだったり、レース中での鬼気迫る心境や勝負どころの心理描写などに見るべきもの、頷けるものがあります。

本作品はこれまでの『サクリファイス』シリーズとは異なる大学自転車部が新たな舞台となっていますが、学生達が主人公であるため、粗削り感や破天荒さが描かれており、それが魅力的に感じられ、『サクリファイス』シリーズに勝るとも劣らない面白さがありました。 

キアズマ

キアズマ

 

 読了日:2015年9月18日 著者:近藤史恵

 

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サヴァイヴ

本書はスピンオフ作品ですが中々よかったです。

『スピードの果て』で、伊庭がレースの中で心の苦しみを克服し、最後、白石に見せた笑顔のシーンは心温まる思いでした。

石尾について、『サクリファイス』では心情等が吐露される事なく亡くなりましたが、本書の『プロトンの中の孤独』や『レミング』において、フォア・ザ・チームの精神があることや、曲がった事が嫌いな一途な男であることがよく分かりました。

『トウラーダ』について、二度目のドーピング違反となったルイスが白石に吐露した「本当にやってないんだ…一度目は…」は切なかったです。  

サヴァイヴ

サヴァイヴ

 

読了日:2015年9月10日 著者:近藤史恵

 

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エデン

近藤史恵さんはつくづく読ませ上手な作家さんだと思います。

ロードレースに臨む前の心情描写や勝負所の描写を端的で明確に表現し結果を次々に開示していく様は読みやすく記憶に残ります。

本作の主たるポイントは薬物疑惑にあったと考えます。

未来のエースと目されるニコラは薬物を使用していたのか?そんな疑惑に駆られてしまう描写がとことん気を惹きます。

真の勝者とは、薬物に依存することなくどんな困難も強靭な精神力で乗り越える者であると考えます。

薬物を使用していなかったニコラへの挑戦を胸に期した白石の今後の飛躍に期待が高まります。 

エデン

エデン

 

読了日:2015年9月4日 著者:近藤史恵

 

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サクリファイス (新潮文庫)

本書は自転車ロードレースという日本ではあまり馴染がない競技を取り入れていますが、文章に無駄な描写がないためよく分かります。

また、石尾の死後、白石が死の真相を辿っていく経緯は実に読み応えがあります。

真相に辿りついたと思いきや、新たな疑問が見え始め、二転・三転の末に真の真相に辿りつくという手法に惹き付けられます。

なお、石尾は自身の考え等を一言も語らずに亡くなっているため、本当の死の真相は謎です。

その謎を残しているため、なお読み手側を考えさせ様々な憶測ができるところに、この作品の奥深さがあると思います。

サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

 

読了日:2015年8月30日 著者:近藤史恵

 

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残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)

「俺ァ男だ、俺ァ男だ」この一文を読んでから10年以上たちますが、今日この日まで、この一文を胸に刻んで生きてきたといっても過言ではありません。

それほどにこの言葉のインパクトは強烈なものでした。苦しい時、悲しい時、心が折れそうな時、打ち負けそうな時、いつだって心の中で「俺ァ男だ」と言い聞かせ、奮い立たせてきました。

この言葉を繰り返すことで、負けてはならない気持ちが湧き、人に媚びず、人に流されず、信念を持って生きてこれたのだと思います。

この言葉をいっときでも忘れれば楽になるでしょうが、そんな気は毛頭ありません。 

残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)

残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 (集英社文庫)

 

読了日:2015年8月19日 著者:浅田次郎

 

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闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)

10年以上ぶりの再読です。

この一年半、池井戸潤高野和明横山秀夫今野敏宮部みゆきの作品を読んできましたが、ここに至って、無性に本書を再読したくなりました。

それは何故か。本書には、前述の作家さん達でも描き切ることができなかった『真の男の生き様』や『女の心意気』が描かれ、それが胸に深く響くからです。

こうまで胸に響くのは何故なのか。浅田氏の秘めた強い思いなどが真実味を増し、そう感じさせるのか。はたまた、読み手の奥底に眠っている悲しみや切なさが呼び覚まされて、共感させられるのか。

浅田氏に思い知らされます。

闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)

闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)

 

読了日:2015年8月8日 著者:浅田次郎

 

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ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

『法廷』に関しては、単行本の方にレビュー済みですので、ここでは、最後に収録されている「負の方程式」についてコメントしたいと思います。

『ペテロの葬列』において、杉村三郎が離婚という憂き目にあい、その時のレビューに腹を括った男の生き様が見てみたい旨のコメントを書きました。

今回、「負の方程式」の中において、杉村三郎が進むべき道を歩み、探偵としての資質を発揮している姿が見れて安心しました。

なお、娘の年齢からすると、離婚後およそ4年の歳月が経過しているようです。その間の経緯を描いた作品を、是非、見てみたいものです。  

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

 

読了日:2015年8月3日 著者:宮部みゆき

 

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ソロモンの偽証 第III部 法廷

本『法廷』では、『事件』、『決意』には無かった醍醐味を味わうことができました。

それを味わえたのは、弁護人が被告人の無罪を弁護しているさなかにも関わらず、被告人が犯してきた数々の悪事を暴き、被告人に突きつけ、被告人を恨む人間なら誰でも告発状を書くことができ、告発状を書いたのは誰かという問題は表面的な問題に過ぎないと敢然と言い放ったシーンです。

これによって、三宅樹里の毒気をも昇華させ、法廷が閉幕する寸前に必死に弁護人を免罪へと仕向けるシーンは、まさに、証言は嘘でも言葉には真実がある。と感じさせるものでした。 

ソロモンの偽証 第III部 法廷

ソロモンの偽証 第III部 法廷

 

読了日:2015年7月30日 著者:宮部みゆき

 

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ソロモンの偽証 第II部 決意

「真実を知りたい」という藤野涼子の強い決意により、遂に、学校内裁判のお膳立てが整いました。

第Ⅲ部の『法廷』では、様々な修羅場が巻き起こることが想定されます。

柏木卓也の死の真相とは?5本の電話の意図とは?そして、弁護人の神原和彦の真の目的は本当のところ何なのか?さらに、浅井松子は三宅樹里によって殺められたのか?などなど知りたいことが山ほどあります。

これらの知りたいことを、『法廷』において、宮部みゆきさんがどのように展開し、表現してくれるのか、最後はどんな落とし込みが待ち受けているのか、非常に楽しみです。 

ソロモンの偽証 第II部 決意

ソロモンの偽証 第II部 決意

 

読了日:2015年7月14日 著者:宮部みゆき

 

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ソロモンの偽証 第I部 事件

宮部さんの作品は杉村三郎シリーズの3部作に続き、4作品目となります。

どの作品も導入から事件発生の過程までおどろおどろしく、見事に惹きこまれます。

杉村三郎シリーズでは、いずれも女性の心の悪(毒)の部分が強調される形でクライマックスが迎えられていました。

本作品においても、三宅樹里や森内教論の隣人の垣内美奈絵が、何れ劣らぬ毒気を発揮しています。

この作品の後に続く『決意』、『法廷』においても、2人が物語にどのように絡み、さらなる毒を発揮するのか、そして、クライマックスにどのように結びついていくのか、興味深いです。

ソロモンの偽証 第I部 事件

ソロモンの偽証 第I部 事件

 

読了日:2015年6月26日 著者:宮部みゆき

 

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ペテロの葬列

本作品は『誰か』、『名もなき毒』に続くシリーズ3作目になりますが、事件に関する謎や推理の部分において、最も楽しませてくれた作品でした。

ただ、読んでいて面白いのですが、事件の謎が終息していく様はそれほどインパクトが無く、想定の域を超える程では無かったというのが正直な感想です。

またシリーズを通じて、杉村夫婦の芝居がかった子供じみたやりとりも馴染めませんでした。

最後は残念な結末となりましたが、これで杉村三郎のあるべき姿や進むべき方向性は明確になってきたのではないでしょうか。

腹を括った男の生き様が見てみたいです。

ペテロの葬列

ペテロの葬列

 

読了日:2015年6月6日 著者:宮部みゆき

 

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名もなき毒

本作品の真のクライマックスが毒殺犯の特定ではなく、原田いずみの立て籠もり事件から派生する毒殺犯である青年の説得、心情吐露、被害者の孫である古屋美知香との対峙にあった点は、クライマックスとして大いに盛り上がり、惹き込まれた部分でありました。

本作品は杉村三郎シリーズの『誰か』に続く2作目でしたが、何れも、「毒」がキーワードになっていて共通性がありました。

3作目の『ペテロの葬列』でも、引き続き「毒」がキーワードとなっているのか、それとも、新たな趣、展開が待っているのか、そんな興味も持って読んでみたいと思います。 

名もなき毒 (文春文庫)

名もなき毒 (文春文庫)

 

読了日:2015年5月23日 著者:宮部みゆき

 

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誰か―Somebody

宮部さんの作品を初めて読みました。

冒頭の聡美の相談話の内容から、梶田氏の死の真相には、ただならなぬ様相が呈していると感じられ、大いに惹きつけられました。

しかしながら、梶田氏の死の真相が明らかになっていく様は推測の範囲内であり、冒頭に抱いた期待感に見合う結末だったとは言い難いものでした。

ただ、本作品を読んでみて、描写の丁寧さだったり、比喩が独特で興味深かったりと惹かれた部分も多々ありました。

本作品は『名もなき毒』と二部作のようですね。物足りなかった部分については、『名もなき毒』に期待してみたいと思います。 

誰か―Somebody (文春文庫)

誰か―Somebody (文春文庫)

 

読了日:2015年5月9日 著者:宮部みゆき

 

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